立山・剱岳(2025.7.24~7.26)

室堂~一の越~立山三山~別山乗越~剣山荘(泊)~剱岳~剣山荘~別山乗越~雷鳥荘(泊)~室堂

当初は一泊だけの計画でしたが、二日目、予定していた室堂バスターミナルまで辿り着けず、結局「雷鳥荘」に泊まりました。18年前に歩いたルートをなぞるべく挑みましたが、やはり体力的に無理があったようです。

 

そびえたつ立山を前に玉殿の湧水で喉を清め、登山の無事を祈ります。

 

まずは鞍部に建つ一の越山荘を目指し、そこから立山三山を縦走します。

 

このあたりの雪渓にはステップが切ってあるので不安はありません。

 

一の越に到着。ここから立山雄山の頂上まで1時間です。

 

部分的に登山路と下山路が別々に設けられ、以前より登りやすくなっていました。(画像はイワギキョウ)

 

稜線上から雷鳥平一帯を俯瞰します。この箱庭感がたまりません。

 

随分登ってきました。一の越山荘も箱庭を構成するオブジェと化しています。背景の山並みを越えていくと別天地五色ヶ原があります。

 

雄山山頂に建つ峰本社です。ここで折り返して下山する人が多いようですが、そのまま進みます。

 

大汝山山頂に人影が見えます。そう、ここは立ち寄るべき場所。なぜなら…

 

黒部湖の絶好の展望所になっているからです。

 

富士の折立を通過し、なだらかな稜線を別山に向かって進みます。

 

別山を過ぎると本来なら剱岳の雄姿が拝めるのですが、ガスにより展望は叶いません。(画像はイワツメクサ)

 

剱御前小舎から剣山荘までの間は高山植物が数多く見られました。(画像はミヤマキンバイ)

 

こちらはおなじみチングルマ。

 

ハクサンイチゲのこれほどの群落はあまりお目にかかれません。

 

湧き上がるガスが剱岳の別山尾根を浮かび上がらせています。主峰は雲の中ですが、前剱ははっきり見えます。裾野に建つのは今宵の宿、剣山荘です。

 

ようやく剣山荘に到着しました。(画像はクルマユリ)

 

山荘内でシャワーを浴びてほっこり。夕刻、玄関を出ると剱沢の上空が茜色に染まっていました。

 


二日目、薄暗い中を出発。登っていくうちに五竜岳から朝日が昇りました。

 

前剱の頂上に立ちました。昨日登った立山ははるか遠方、剣山荘はマッチ箱のように小さく見えます。

 

前剱で小休止後、本峰に向けて出発します。さあ、ここからが本番。

 

先行者の姿が見えます。ルートは鎖が整備され足場も確保されているので見た目ほどの怖さは感じません。

 

チングルマが早くも衣替えをしていました。

 

最大の難所とされる「カニのたてばい」です。狙っていた構図の写真が撮れました。

 

頼むから落っこちないで、と念じながら岩の壁に取り付きます。ちなみに下山用には別ルートが設けられています。さすがにここを下るのは難しいか。

 

山頂に着きました。北側には富山平野とその向こうに日本海が広がっています。

 

初めてここに立ったとき、鹿島槍ヶ岳の印象的なシルエットに惹きつけられました。

 

中央奥に鎮座するのは薬師岳。その真下あたりに室堂バスターミナルが見えます。ということは室堂からもここ剱の山頂が見えていることになります。

 

さあ下山のときです。より慎重にと自分に言い聞かせます。(画像はチシマギキョウとタカネヤハズハハコ)

 

振り向きゴジラ!

 

進む先に「平蔵の頭」が立ちはだかっています。頂上近くや側壁に登山者の姿がちらほら。

 

剣山荘まで下りてきました。八ツ峰越しに、左に五竜と右に鹿島槍。同じ景色も行きとは違って穏やかに映ります。

 

ここから剱御前小舎まではなだらかな登山道ですが、実はやっかいなことがあります。(画像はチングルマ)

 

それは繰り返し現れる雪渓の存在です。個人的には岩場よりもむしろ怖さを感じます。このような横断箇所が現れるたびに心が折れそうになりました。

 

雷鳥坂を下っています。体力の消耗に加え、雷雨にも見舞われ、なかなかペースが上がりません。結局、最終バスに間に合わないと判断し、雷鳥荘で一泊することになりました。

 


雷鳥荘ではゆっくり温泉につかり、心身をいたわることができました。朝食もビュッフェスタイルで山小屋とは思えない充実ぶりでした。

 

バスターミナルまでそぞろ歩きます。もはや鼻歌交じりの気分です。

 

オンタデは実はキレイな色合いの花です。

 

血の池地獄ではその名のとおり赤茶けた池が散在しています。

 

背景にある大日連山を縦走し、称名滝まで下ったのは6年前のこと。思い出深い静かな山旅でした。

 

みくりが池の水面が深いブルーに輝いています。

 

あの巨大な山塊を縦走したのはつい一昨日のことだったんだな。

 

浄土山は正直印象の薄い山ですが、立山信仰上、重要な山だったようです。次は心して登りたい。

 

剱岳山頂の"チラ見せ”をしかと瞼に焼き付け、バスに乗り込みます。

 

帰路、立山博物館に立ち寄りました。学芸員の方がとりわけ熱っぽく語られたのがコレ、剱岳の山頂で発見された錫杖頭です(なんでも最近になってようやく撮影が解禁されたとか)。平安時代に修験僧が奉納したと推察されています。鎖も梯子もない時代の、人智を超えた偉業!

 

立山曼荼羅がいくつか展示されていますが、剱岳(画面左上)は例外なくおぞましい針の山。一方、立山は天女が舞い降りる平和な山として描かれていました。

 

こちらの剱岳は針山というより得体のしれない異形の山。

 

ちょうど特別企画展「立山を描く」が開催されていました。現代版の剱岳は荘厳そのもの。

 

斎藤真一作「早春の立山遠望」。どことなく松本大洋を連想させる画風です。輝く一番星が印象的。

 

下山後、立山曼荼羅について調べるうちに知り得た興味深い話。元来立山信仰は剱岳を対象としていたが、民衆を危険な剱岳に近付けないため、あえて剱岳を針地獄のように描き、意図的に信仰登山の対象を浄土山、雄山、別山へと誘導した。三山の頂にはそれぞれお堂があるが、お堂で手を合わせるとその先に剱岳が来るよう設計された。―― これを知ると室堂から剱岳の山頂がギリ見えることにもロマンを感じます。